相続した不動産の売却時に税金はどうなる?注意点や必要な手続きも解説
不動産を相続した後、その不動産を売却する際に「どれだけ税金がかかるのか」と不安に感じていませんか。相続した不動産を手放したいものの、税金の仕組みが複雑で分かりにくいとお悩みの方も多いでしょう。この記事では、相続不動産の売却に関して発生する税金について分かりやすく解説いたします。税金の全体像から、計算の方法、軽減できる特例まで幅広くご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
相続した不動産を売却する際にかかる税金の全体像
相続した不動産を売却する場合、主に以下の税金がかかります。まず譲渡所得税と住民税、場合によっては復興特別所得税も併せて課税されます。これらは売却時に譲渡益(売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益)が発生したか否かで課税の有無や税額が変わります。譲渡益がある場合には所得税・住民税が課税され、譲渡益がない(譲渡所得がゼロまたはマイナス)場合は課税対象になりません。
| 税金の種類 | 課税タイミング | 譲渡益の有無による違い |
|---|---|---|
| 譲渡所得税・住民税(+復興特別所得税) | 譲渡時、翌年の確定申告時 | 譲渡益がある場合のみ課税、ゼロまたはマイナスの場合は課税対象外 |
| 印紙税 | 売買契約書作成時 | 譲渡益の有無にかかわらず発生 |
| 登録免許税 | 抵当権抹消や相続登記に伴い | 譲渡益に関係なく必ずかかる |
加えて、売買契約書の作成時には印紙税が必要になります。また、不動産の譲渡に際して必要な相続登記や抵当権抹消登記には登録免許税を負担する必要があります。これらはいずれも譲渡益の有無に関わらず発生する税費です。
譲渡所得税・住民税の仕組みと計算の流れ
相続した不動産を売却する場合、まず譲渡所得(売却益)の計算が必要です。譲渡所得は「収入金額」から「取得費」「譲渡費用」「特別控除」を差し引いて求めます。取得費には、被相続人が取得した時の価格を引き継ぎ、それに相続税の一部を上乗せできる「取得費加算の特例」があります(要件あり)。この特例を活用する場合は確定申告時に所定の計算書を添付する必要があります。出典をもとに、譲渡所得の仕組みを整理しました。ご自身の場合にも当てはまるか、詳細は専門家にご相談ください。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 取得費加算の特例 | 相続税の一部を取得費に加算(譲渡所得が圧縮) | 相続開始翌日から3年10か月以内の売却が条件となります。相続税が課された不動産が対象です。 |
| 所有期間の考え方 | 被相続人の取得日から通算 | これにより、多くの相続不動産は長期譲渡所得として扱われ、税率が低くなります。 |
| 税率 | 長期譲渡所得:所得税15.315%+住民税5%(合計20.315%) 短期譲渡所得:所得税30.63%+住民税9%(合計39.63%) |
所有期間が5年を超えると長期税率になります。相続では被相続人の取得日を元に判断されます。 |
まず、譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除という計算式で譲渡所得を出します。取得費には「相続税の取得費加算の特例」を適用できる場合があり、取得費を増やすことで課税対象となる譲渡所得を減らすことが可能です。特例を受けるためには、相続税の申告・納税が済んでいること、かつ相続開始翌日から3年10か月以内に売却する必要があります(取得費加算の特例)。
また、所有期間の判定は相続人が取得した時点ではなく、「被相続人の取得時期」から計算されます。これにより、相続後すぐ売却しても長期譲渡所得(税率約20.315%)として扱われる場合が多く、税負担が軽くなります。ただし、被相続人の取得から5年以内に相続・売却が行われると短期譲渡所得(税率約39.63%)になるケースもあり、注意が必要です。
このように、譲渡所得の計算は取得費や所有期間、特例の適用可否によって大きく変わります。売却を検討される際には、確定申告や所有期間の確認などを慎重に行うことが肝心です。
印紙税・登録免許税など譲渡益以外にかかる税金とは
相続した不動産を売却する際、譲渡所得税や住民税が発生する場合がありますが、それらに加えて、売却に伴って必ず発生する「印紙税」と「登録免許税(抵当権抹消を含む)」があります。これらは譲渡益の有無にかかわらず必要な費用です。
まず、売買契約書を作成するときには印紙税がかかります。契約金額に応じて税額が定められており、軽減措置が適用される場合があります(例:令和9年3月31日まで)ので、通常より少ない額で済むことがあります。たとえば、3000万円の契約の場合、軽減後の印紙税は1万円になります(本則2万円)。
次に、相続登記を行う際の登録免許税です。これは不動産の固定資産税評価額に0.4%を乗じて計算されます。登録免許税の金額は評価額によって異なりますが、具体的には評価額737万2000円の例では約2万9400円となります。
また、住宅ローン等により設定された抵当権が存在する場合、売却の前に抵当権抹消登記が必要です。この際の登録免許税は、不動産一件につき1000円、土地と建物がある場合はそれぞれ1000円ずつ、合計2000円かかります。
下表は、相続した不動産の売却で譲渡益以外にかかる主な税金を整理したものです。
| 項目 | 課税対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 印紙税(売買契約書) | 契約書に記載された売買代金 | 金額によって段階的に税額が増加。軽減措置により本則より安くなることが多い(例:3000万円→1万円) |
| 登録免許税(相続登記) | 固定資産税評価額 | 評価額の0.4%。評価額に応じて税額が変動(例:約2万9400円) |
| 登録免許税(抵当権抹消) | 1件ごと | 不動産1件につき1000円。土地と建物が両方ある場合は合計2000円 |
これらの印紙税および登録免許税は、譲渡益の有無にかかわらず必ず発生する費用です。不動産の売却を検討される際は、これらの税負担も見込んでおくことが大切です。
特例を活用して税負担を軽減する方法
相続した不動産を売却する際、税負担を軽減できる特例制度があります。代表的なものに、「取得費加算の特例」と「空き家の3,000万円特別控除(空き家特例)」があります。まず取得費加算の特例は、取得した不動産を相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以降3年以内※約3年10ヶ月以内に売却すると、納めた相続税の一部を取得費に加算することで譲渡所得を減らせます。
| 特例名 | 適用条件の主なポイント | 適用期限 |
|---|---|---|
| 取得費加算の特例 | 相続税が課税された相続財産を対象。相続開始翌日から約3年10ヶ月以内の譲渡 | 相続開始の翌日から3年10ヶ月以内 |
| 空き家特例(3000万円控除) | 被相続人の居住用家屋またはその敷地で、耐震性のある建物(または解体更地)かつ相続人が土地・建物を取得し、売却代金1億円以下、相続開始から3年以内の年末までの譲渡 | 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 併用不可 | 上記2つの特例は併用できず、より有利な方を選択する必要あり | ― |
一方、空き家特例は、被相続人が居住していた家屋やその敷地を相続し、昭和56年5月31日以前に建築されているもの、かつ耐震補強がされているか解体されて更地になっている必要があります。また相続開始の直前に他者が居住していなかった空き家であり、相続人が土地と建物を一体で取得している点も条件です。さらに売却代金が1億円以下であることが求められます。
いずれの特例も適用を受けるには、売却した翌年に必ず確定申告を行う必要があります。申告書には「譲渡所得の内訳書」や「相続税額の計算明細書」などの添付書類が必要です。
まとめ
相続した不動産を売却する際には、複数の税金が関係してきます。主に譲渡所得税や住民税のほか、印紙税や登録免許税も必ず発生します。それぞれの税金がどのようなタイミングで発生し、譲渡益の有無によって負担額が変わることも理解が必要です。また、所有期間の計算や特例の活用によって税負担を軽減できる場面もあります。正しく知識を持つことで、不要なトラブルや思わぬ出費を防げます。ご不安な点はお気軽にご相談ください。